「無添加」「保存料不使用」表示から読み解く:化学物質と環境負荷の関係
「無添加」「保存料不使用」表示は環境にどうつながる?
日々の食品選びで、「無添加」や「保存料不使用」といった表示を目にすることがあります。これらの表示は、多くの場合、健康への配慮から選ばれることが多いかもしれません。しかし、これらの表示は、私たちの食が環境に与える影響とも無関係ではありません。
食品表示の「無添加」「保存料不使用」という言葉から、食の環境影響についてどのように考えられるのでしょうか。今回は、これらの表示に隠された環境へのヒントを読み解いていきます。
「無添加」「保存料不使用」表示の基本
まず、「無添加」や「保存料不使用」といった表示が何を意味するのか、簡単に整理しましょう。
「無添加」という言葉には厳密な定義がない場合も多く、「何が添加されていないのか」は製品によって異なります。「保存料無添加」「着色料無添加」のように、具体的に何が使われていないかが示されていることが一般的です。
一方、「保存料不使用」や「保存料無添加」は、食品を長持ちさせるために使用される保存料が一切使われていないことを示します。保存料は、カビや細菌などの増殖を抑え、食品の品質を保つ目的で使用されます。
これらの表示が、環境影響とどのように関連するのかを見ていきましょう。
化学物質の使用と環境負荷
「無添加」や「保存料不使用」という表示は、食品の製造過程において、特定の化学物質(添加物、特に保存料)を使用していないことを意味します。
添加物の製造には、化学的な合成プロセスが必要です。この製造過程でエネルギーが消費されたり、特定の排出物が発生したりすることがあります。また、使用された添加物が環境中に排出された場合、水質や土壌に影響を与える可能性も指摘されています。
「無添加」や「保存料不使用」の食品を選ぶことは、こうした特定の化学物質の製造・使用量を削減し、それに関連する環境負荷を低減する取り組みにつながる可能性があります。原材料名欄に添加物が少ない、あるいは全く記載されていない製品は、この点において環境への配慮がなされていると考えることができます。
保存方法とエネルギー消費
保存料を使わない食品は、品質を保つためにより注意深い管理が必要になることがあります。その代表的な方法が、加熱殺菌の強化や、冷蔵・冷凍といった低温での保存です。
食品の保存方法に関する表示を確認してみましょう。「要冷蔵(10℃以下)」「要冷凍(-18℃以下)」といった指示がされている場合、家庭での保管だけでなく、製造、輸送、店頭での陳列といったサプライチェーン全体で常に温度管理が必要になります。
冷蔵や冷凍には電気エネルギーが必要です。特に冷凍は、冷蔵よりもさらに多くのエネルギーを消費します。したがって、保存料を使わない代わりにこれらの方法で品質を保つ場合、化学物質の使用を減らす一方で、エネルギー消費による環境負荷(温室効果ガス排出など)が増える可能性があります。
食品表示の保存方法を見ることで、その食品がどのように品質を保っているのか、そしてそれに伴うエネルギー消費について考えるヒントが得られます。
賞味期限と食品ロス
保存料は食品の劣化を遅らせ、保存期間を延ばす役割があります。保存料を使わない場合、賞味期限が比較的短く設定されていることがあります。
賞味期限が短い食品は、購入後に期限内に消費しきれない場合、食品ロスにつながるリスクが高まります。食品ロスは、生産、加工、輸送、販売、そして廃棄の各段階で様々な環境負荷を発生させます。廃棄された食品が埋立地で腐敗する際にメタンガス(強力な温室効果ガス)を発生させることも大きな問題です。
食品表示の賞味期限を確認し、短い場合は計画的に購入・消費することが、食品ロス削減、ひいては環境負荷低減につながります。
買い物でチェックしたいポイント
「無添加」「保存料不使用」表示から環境影響を考える上で、日々の買い物で意識したいポイントは以下の通りです。
- 「無添加」「保存料不使用」表示に注目する: 化学物質の使用を減らすという点での環境配慮を確認できます。
- 原材料名を確認する: どのような添加物が使われているか(または使われていないか)を知り、より環境負荷が少ないと考えられる選択肢を探る手がかりになります。
- 保存方法を確認する: 「要冷蔵」「要冷凍」など、保存料以外の方法での品質保持がエネルギー消費を伴う可能性があることを理解し、自身のライフスタイルに合った無理のない範囲で選択肢を検討します。
- 賞味期限を確認し、計画的に購入・消費する: 特に賞味期限が短い製品を選ぶ場合は、食品ロスを出さないよう必要な分だけを購入することを心がけます。
- 他の環境配慮を示す表示と合わせて見る: 「無添加」だけでなく、有機JASマークやレインフォレスト・アライアンス認証など、他の環境や社会に配慮した表示も確認することで、より多角的な視点で食品を選ぶことができます。
まとめ
「無添加」や「保存料不使用」といった食品表示は、健康への配慮だけでなく、食の環境影響を考える上でも重要な手がかりとなります。これらの表示は、化学物質の使用削減という側面で環境負荷低減につながる可能性がある一方で、代替となる保存方法や短い賞味期限が、エネルギー消費増や食品ロスといった別の環境課題と関連する場合もあります。
一つの表示に注目するだけでなく、原材料名、保存方法、賞味期限など、様々な表示情報を総合的に確認し、それが環境にどうつながるのかを考えることが大切です。日々の買い物で食品表示を意識的に読み解く習慣を持つことで、持続可能な食の選択につながる賢い判断ができるようになるでしょう。