「砂糖・甘味料」表示に注目!甘さの裏にある食の環境影響を考える
毎日の甘さ、その裏にある環境影響とは
私たちは日々の食卓で、様々な食品の「甘さ」を楽しんでいます。お菓子や飲み物はもちろん、加工食品や調味料にも、砂糖や様々な甘味料が使われています。しかし、これらの甘味料がどのように作られ、私たちの手元に届くのか、そのプロセスが環境にどのような影響を与えているかまで考える機会は少ないかもしれません。
食品表示には、その甘さが何由来なのかを知るヒントが隠されています。表示を通して、食の甘さが持つ環境影響を理解し、日々の買い物に役立ててみませんか。
食品表示の「原材料名」で「砂糖・甘味料」を探す
多くの加工食品には、使用されている原材料が一覧で表示されています。この「原材料名」の欄には、使用量の多い順に原料が記載されており、砂糖や甘味料もここにリストアップされています。
例えば、クッキーや清涼飲料水、パンなど、甘みのある食品の原材料名を見てみてください。「砂糖」「ぶどう糖果糖液糖」「果糖ぶどう糖液糖」「水あめ」といった糖類や、「アスパルテーム」「スクラロース」「ステビア」といった人工甘味料や天然甘味料の名前を見つけることができます。これらの表示は、その食品の「甘さ」が何によってもたらされているかを示しています。そして、この表示から、その甘味料が環境に与える影響を考える手がかりが得られるのです。
「砂糖」の生産と環境への影響
「砂糖」と表示されているものの多くは、サトウキビやてんさい(砂糖大根)から作られます。これらの作物の栽培は、広大な土地と大量の水が必要です。
- 土地利用: サトウキビは主に熱帯・亜熱帯地域、てんさいは温帯地域で栽培されます。特にサトウキビ畑のために森林が開墾される場合があり、これが生物多様性の損失や二酸化炭素を吸収する森林の減少につながることが指摘されています。
- 水資源: どちらの作物も成長に多くの水を必要とするため、栽培地域によっては水資源への大きな負荷となります。
- 肥料・農薬: 収穫量を増やすために肥料や農薬が使われることがあり、これらが適切に管理されないと、土壌や水源を汚染する原因となる可能性があります。
- 輸送: 主な生産地が海外の場合、日本まで長距離を輸送する必要があります。この輸送には船舶や航空機などが使われ、多くの温室効果ガスを排出します。
食品表示で「原材料名:砂糖」とだけ書かれている場合、その砂糖がどこでどのように作られたかまでは分かりません。しかし、もし「原材料名:砂糖(原料糖:オーストラリア製造)」のように、原料糖の製造地などが追記されている場合は、その背景にある環境負荷をより具体的に想像するヒントになります。また、「原産国名」表示がある場合は、それが作られた国を知ることで、輸送距離について考えることもできます。
「異性化液糖」や「人工甘味料」の環境影響
「ぶどう糖果糖液糖」や「果糖ぶどう糖液糖」といった異性化液糖は、主にトウモロコシやイモ類のでんぷんを分解・加工して作られます。
- 原料作物の栽培: 原料となるトウモロコシなどは、大規模な単一栽培が行われることが多く、これもまた広大な土地利用や、肥料・農薬の使用による土壌・水質への影響が懸念されます。遺伝子組み換えされたトウモロコシが使われることもあります(食品表示にその旨が記載される場合とされない場合があります)。
- 加工プロセス: でんぷんから糖液を作る過程は、酵素処理などを伴う比較的複雑な加工であり、エネルギーを消費します。
一方、「アスパルテーム」「スクラロース」のような人工甘味料は、主に化学合成によって作られます。製造過程で使用される化学物質や、その過程でのエネルギー消費など、固有の環境負荷が存在すると考えられています。食品表示でこれらの名前を見た時、その甘さは畑で育った作物からだけでなく、工場での化学的なプロセスを経て作られていることを意識することができます。
日々の買い物でできること:環境に配慮した選び方のヒント
食品表示の「砂糖・甘味料」に関する情報から、環境負荷を減らすために私たちができることは何でしょうか。
- 「原材料名」をチェックする習慣をつける: どのような種類の甘味料が使われているかを知ることから始めましょう。甘味料の種類によって、生産過程や環境負荷の傾向が異なることを理解する第一歩となります。
- 甘味料が多く含まれる食品を意識する: 原材料名の最初の方に砂糖や異性化液糖が記載されている食品は、それらが主要な原料であることを意味します。そうした食品の購入頻度や量を見直すことも、間接的な環境負荷低減につながります。
- 可能な範囲で「原産国名」や認証マークをチェック: 輸入品が多い砂糖の場合、「原産国名」を見ることで、輸送距離を想像できます。また、「有機JASマーク」や「フェアトレード認証」が付いた砂糖や原料を使った食品を選ぶことも、より環境や社会に配慮した選択肢となります。有機栽培は農薬や化学肥料の使用を減らすため環境負荷が比較的少なく、フェアトレードは生産者の持続可能な生産を支援します。
- 加工度の低い食品を選ぶ: 砂糖や甘味料は多くの加工食品に含まれています。素材そのものの味を活かしたシンプルな食品を選ぶことは、使われる甘味料の量や種類を減らし、全体の環境負荷を低減することにつながります。
- 内容量・サイズを考慮する: 食べきれる、使いきれる量やサイズの食品を選ぶことで、食品ロスを防ぎ、無駄な生産や輸送に伴う環境負荷を減らすことができます。
表示から広がる「甘さ」と環境のつながり
食品表示の「砂糖・甘味料」の項目は、単に甘さの成分を示しているだけではありません。そこには、作物栽培のための広大な土地や水、化学物質の使用、そして遠い国からの輸送といった、様々な環境影響のストーリーが隠されています。
日々の買い物で食品表示を見る際に、そこに記載されている「砂糖」や「甘味料」が、どこから来て、どのように作られたのか、少しだけ想像を巡らせてみてください。表示を意識することが、環境に配慮した食の選択への第一歩となります。完璧を目指す必要はありません。できる範囲で、表示から環境へのヒントを読み取り、賢く食品を選んでいくことが、持続可能な食卓、そして社会へとつながっていくでしょう。