「タンパク質」表示に注目!食肉・大豆など、タンパク源で変わる食の環境影響
食品表示から考える、あなたのタンパク質選びと環境影響
私たちの体を作る上で欠かせない栄養素の一つに、タンパク質があります。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、様々な食品からタンパク質を摂取していますが、実は、どの食品からタンパク質をとるかによって、環境に与える影響は大きく異なります。
日々の買い物で食品表示を少し意識するだけで、この環境への影響を考えるヒントが得られます。今回は、食品表示の「原材料名」や「栄養成分表示」などを手掛かりに、タンパク質源と環境影響について見ていきましょう。
タンパク質源の種類と環境への影響
タンパク質を含む食品は多岐にわたりますが、その生産過程で環境にかかる負荷は種類によって大きく差があります。
一般的に、畜産業、特に牛や羊などの反芻動物の飼育は、温暖化の原因となる温室効果ガス(ゲップに含まれるメタンガスなど)の排出量が多く、広大な土地(飼料用の穀物栽培地や放牧地)や大量の水が必要となるため、環境負荷が高いとされています。豚や鶏は牛ほどではありませんが、やはり飼料生産や排泄物処理などに伴う環境負荷が発生します。
一方、大豆や豆類、穀物などの植物性食品をタンパク質源とする場合は、畜産物に比べて必要な土地や水の量が少なく、温室効果ガスの排出量も抑えられる傾向にあります。
魚介類については、漁獲方法(混獲や海底破壊のリスク)や養殖方法(水質汚染や天然資源への影響)によって環境負荷が異なります。
食品表示のどこを見るか?タンパク質源を知るヒント
日々の買い物で、どのような食品表示を見れば、その食品に含まれるタンパク質源と環境影響を考えることができるのでしょうか。
原材料名
最も直接的にタンパク質源の種類を知ることができるのは「原材料名」の表示です。 例えば、 * 「牛肉」「豚肉」「鶏肉」と書かれていれば、畜産動物由来のタンパク質です。 * 「大豆」「豆腐」「油揚げ」「枝豆」などと書かれていれば、大豆由来の植物性タンパク質です。 * 「かつお」「まぐろ」「さけ」といった魚の名前や、「えび」「いか」といった表示があれば、魚介類由来のタンパク質です。 * 「生乳」「脱脂粉乳」「チーズ」などは乳製品由来、「鶏卵」は卵由来です。
原材料名の最初に記載されているものほど多く含まれているため、どのタンパク源が主であるかを把握できます。この原材料名を見ることで、「ああ、この食品のタンパク質は牛由来だから、環境負荷は比較的高い可能性があるな」といったように、前述のような環境影響の違いを思い起こすヒントになります。
栄養成分表示
「栄養成分表示」には、その食品100gあたりや一食あたりのタンパク質の含有量がグラム(g)で示されています。 この表示自体が直接的な環境影響を示すわけではありませんが、例えば「同じタンパク質量を摂取するのに、どの食品を選ぶか」を考える際に参考になります。同じタンパク質量の食品でも、原材料が植物性か動物性かで環境負荷は大きく異なるため、栄養成分表示と原材料名を合わせて見ることで、より環境効率の良い選択肢はどれかを考えるきっかけになります。
産地表示
食肉や魚介類、大豆などの農産物には「産地」が表示されていることがあります。産地が近ければ、その分輸送にかかるエネルギー(温室効果ガス排出)が少なくなる可能性があります(いわゆるフードマイレージの考え方)。国産か海外産かだけでなく、国内であればどの地域かといった情報も、環境負荷を考える一つの視点となります。
認証マーク
タンパク質源によっては、環境や社会への配慮を示す認証マークが付いていることがあります。 * MSC認証・ASC認証: 持続可能な漁業や責任ある養殖によって生産された水産物につく認証です。魚のタンパク質を選ぶ際に、これらのマークがあれば、環境への配慮が進んでいると判断できます。 * 有機JASマーク: 有機農業で生産された植物性食品(有機大豆など)や、有機畜産物につく認証です。化学肥料や農薬の使用を抑え、土壌や生物多様性への負荷を減らす農法で生産されたことを示します。
これらの認証マークは、そのタンパク質源が生産される過程での環境負荷低減への取り組みを示す重要な手掛かりとなります。
日々の買い物で実践できるヒント
食品表示から得られる情報を活用して、環境に配慮したタンパク質選びを日々の買い物に取り入れてみましょう。
- 植物性タンパク質を増やす: 食肉中心の食事から、豆腐、納豆、豆類、レンズ豆、きのこ、ナッツ類など、植物性タンパク質を意識的に取り入れてみましょう。「原材料名」にこれらの食品が多く含まれるものを選んでみてください。最近では、大豆や穀物から作られた「プラントベースミート」も増えています。
- 肉の種類を意識する: 肉を食べる際には、環境負荷が比較的高めとされる牛肉の頻度を少し減らし、鶏肉や豚肉を選ぶといった工夫も考えられます。
- 認証マークを確認する: 魚介類を選ぶ際にはMSC認証やASC認証のマークを、大豆製品などを選ぶ際には有機JASマークを探してみましょう。
- 国産・旬を意識する: 可能であれば、産地が近く、旬の時期に生産されたものを選ぶことで、輸送による環境負荷や、加温・加湿といった施設栽培にかかるエネルギー負荷を抑えられる可能性があります。
小さな一歩が環境への配慮につながる
食品表示の「原材料名」や「栄養成分表示」を見ることは、単に栄養バランスを考えるだけでなく、その食品がどのように作られ、どのような環境影響を持つかを考えるきっかけになります。
今日からでも、お買い物の際に手に取った食品の原材料名をチェックし、どんなタンパク質源が含まれているのか、少し意識してみてはいかがでしょうか。完璧を目指す必要はありません。週に一度、肉の日を減らしてみる、いつもの大豆製品に認証マークが付いているか見てみる、といった小さな一歩が、持続可能な食の未来につながっていきます。